Pasculアイドル論~未完成の美少女~

今、空前の「アイドルブーム」であることは誰もが頷くところだろう。2013年のNHK紅白歌合戦のアイドル出場数を見れば明らかだ。


AKB48、ももいろクローバーZ、モーニング娘。など挙げていけばキリがない程のアイドルグループが生まれ、日々私たちに笑顔と元気を振りまいている。 


現代日本、なぜこうも「アイドル」が流行っているのか。その原因に迫りたいと思う。 



アイドル=可愛いだけ?

まず考えられる原因としては単純に「可愛いから」である。歌番組でアップになるときの彼女たちといったら「その一瞬の笑顔に全てを賭けてますっ!」と言わんばかりの「可愛さ」である。


本来、人間は「可愛い」ものが好きだ。可愛い猫や犬、赤ちゃんを見るとこちらも笑顔になる。同じように、若くて可愛い子が微笑んでたら「可愛いな」と頬を緩めるのが普通である……


もちろん例外的にそれらを嫌う人はいるけれども、一般的には「可愛い」が好きというのは老若男女変わらないはずだ。 


しかし、ではアイドルは「可愛い」事だけがブームの原因なのだろうか。可愛けりゃ売れるのか。


――否、それはそうとも限らない。


「あのアイドル、そんな皆が夢中になるほど可愛いか!?」という声は後を絶たない。


例えばアイドルではない佐々木希や新垣結衣なんてほんと美しいし可愛いが、元AKB48の前田敦子の方が熱狂的なムーブメントを起こしたのは事実だろう。いやあっちゃんも可愛いけど。



アイドルに「ハマる」

ではなぜこんなに「アイドル」は熱狂的なファンを獲得し、今や老若男女に至るまで「ハマる」人々を生み出しているのだろうか? 


そもそもアイドルに「ハマる」とはどういうことなのだろうか。他の芸能人と圧倒的に違う点は、そのアイドルを「応援する」という点にあるように思う。


雑誌やテレビで鑑賞するだけではない。歌番組を録画して見たり、ライブに行ったり、最近だったら投票したり、その根底にあるのは「○○ちゃん、頑張れー!」という応援する気持ちのように思う。


そう考えると、アイドルの魅力というのは「応援させる力」にあるのではないだろうか。



日本人は「未完成」が好き

では、「応援させる力」とは何なのか。


それは「未完成だけど頑張っている」ということではないだろうか。


そう、そこで挙げられる点が、日本人は本来この「未完成」というものが大好きという事なのである。


織田信長も坂本龍馬も「道半ばにして死ぬ」からこれだけ愛され、フランダースの犬も平家物語も「悲劇で終わる」話だからこれほど多くの日本人の心を打ってきたのだろう。 


それはなぜなら、古来日本人には「謙遜の美徳」がある。


謙遜とは、「私はまだまだ未完成ですから」と自分から言うことである。それゆえ「思いっきり成功者!オラオラ!」な人々には、憧れはしても結局共感も応援もせず「いいとは思うけどハマりはしない…」という状態で終わってしまうのだ。


それよりも「最後まで未完成」という状態に共感や応援する気持ちが起こり「好き」になりやすいのではないだろうか。 


そのような文化的背景を持つ日本人が、アイドルという「未完成」が売りの可愛い女の子たちにハマるのはある意味当然と言えるだろう。 



現代日本とアイドル文化

また、現代日本はその「未完成を応援する」という風潮に拍車がかかっていると言える。 どういうことかと言うと、現代日本人は、マンガ文化、ネット文化に昔から触れていることが多いということである。  


マンガの主人公というのは男子女子問わず、読者に「応援させる」キャラクターが多い。カードキャプターさくらのさくらちゃんだって、セーラームーンのうさぎちゃんだって「ドジなとこもあるし顔もまぁ可愛いけど普通、でもみんなのために頑張ってます☆」という根っからの「アイドル気質」だ。


スラムダンクの桜木花道もワンピースのルフィも「未完成だけど周りが応援してしまう」キャラクター設定になっている。 彼ら彼女らを昔から応援してきた現代日本人が、大人になって三次元の「アイドル」を応援するのはごく自然な流れなのだろう。


またネット文化の発達によって、アイドル個々人の「個性」「物語」が知りやすくなった。やはり歌番組で歌っているだけよりも、ブログやTwitter、サイトに載っているエピソード等を通したほうが、アイドルが「どういう子なのか」を知りやすい。


それによって例えば「ドジ」「天然」「ヘタレ」といった「未完成」さが露わになり、共感や「自分が応援しないと!」という気持ちを起こさせやすいのだと言えよう。 こうした現代日本の文化をうまく取り込んだのが昨今の「アイドル文化」なのだろう。 



アイドルの最大の魅力とは?

アイドルにハマるというのは、アイドルに共感しつつ、応援すること。結局、アイドルというのは「周りを巻き込む力」「皆に好きになってもらう力」を持つ女の子たちだと言えよう。


最後に、初の「アイドル朝ドラ」と言われた「あまちゃん」の名台詞を引用して終わりたい。  


東京へ旅立つアキが春子に「私、変わった?一年前とずいぶん変わった?」と聞くシーン。 春子はこう答える。


「変わってないよ。昔も今も地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子だけど、だけどみんなに好かれたね。あんたじゃなくて、みんなが変わったんだよ。自信持ちなさい。それはね、案外すごいことなんだからね。」  


能年玲奈演じる主人公「アキ」は、作中だけでなく現実の日本で話題を席巻する「アイドル」になった。最初に挙げた紅白歌合戦の「あまちゃん」コーナーの時間の長さを見れば、昨年の日本で一番話題に上がったアイドルなのではないか、とも思える。


しかしここまで「アキちゃん」がブームになったのは、能年玲奈が可愛いからというだけではない。そのアキちゃんのキャラクターも相まって「皆に好かれる」の魅力に秀でていたのである


アイドルとは、その未完成さからくる「応援したい!好き!」を生む女の子のことなのだ。 


これからどのようなアイドルが生まれ、どのように私達の心を掴んでいくのだろうか。どのような形であれ、日本人が謙遜の美徳を持って未完成を愛する限り、アイドルは人々の心を惹きつけ続けるのだろう。 

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