「私は、猛獣使いになるべきなのだと思います」
この言葉を発した人物をご存知だろうか。
そう、山極寿一
ーー今秋誕生した京大の新たな総長だ。アフリカの密林でゴリラと戯れるうち、世界的に有名になったゴリラ研究の第一人者。その「人気ぶり」から、総長になるのが悔やまれるとの声も一部ではあったという......。
やまぎわ・じゅいち(1952-)
東京都国立市生まれ京都大学理学研究科卒カリソケ研究センター客員研究員日本モンキーセンターリサーチフェロー京都大学霊長類研究所助手京都大学理学研究科教授・研究科長京都大学総長↑学術書だけでなく、絵本等も手掛ける。
研究者としても教育者としても京大のトップを疾走する山極総長のことを探っていく中で、パスカルはなんと京大生とゴリラの相関性を発見したのである! ここでは、山極総長のお人柄、京大生とゴリラの相関性、そしてそこから見えてくる新たな京大像を紹介しよう。
1.山極教授の研究
山極教授というと、今ではすっかり「ゴリラ」研究の第一人者だが、最初からゴリラに絞っていた訳ではなかった。もともと人類学に興味があり、大学院生時代から日本でニホンザルを調査し回っていたのだ。そのニホンザルを研究していた時に、屋久島で野生のサルに出会った。
そこから、餌付けされていない野生のサルに興味を持ち、ゴリラに興味を持ったときも、野生のゴリラと出会いたいと思うようになった。 念願叶って、山極教授がはじめて野生のゴリラと出会ったのは26歳の時。一人で、現コンゴ民主共和国の山奥へゴリラを調査しに行ったときだった。たった一人で苦労して向かった山奥で、山極教授は野生のゴリラと対面したのである。
フィールドワークという「現地調査」、つまり野生のゴリラがいる熱帯雨林や山奥へ実際に向かい、直接、野生のゴリラを調査するのが山極教授の手法。そこでなんと山極教授は、ゴリラの群れに「ホームステイ」をしたのだ。たとえば、ゴリラと同じ速度で動き、ゴリラに似せた声を出す。同じ声は出せなくとも一生懸命真似することで、こいつはちょっと変なゴリラだなと思ってくれる、と山極教授は語る。
調査の中で、ゴリラと一緒に雨宿りをしたり、昼寝をしたり、挨拶したりしたという山極教授。山極教授のお人柄のあたたかみは、ゴリラとともに過ごす日々の中で培われたのかもしれない。 では、山極教授が結ぶ「ゴリラ」と「京大」には、何らかの相関性はあるのだろうか?
2.京大生はゴリラである
山極教授の研究によると、同じ類人猿でも、サル社会にはヒエラルキーがある一方、ゴリラ社会には序列がないという。サルは強い者が頂点に立ち、明確に序列をつける。が、ゴリラは群れの中に序列をつくらず、ケンカが起きても決着はつけずに和解して終わるのだ。
また、ゴリラの「ドラミング」という胸を叩く行為は、一見宣戦布告のような攻撃性のある行動に見えるが、実は「自己主張」なのだ。人間には誤解されがちだが、そうやって自己主張をすることで、興奮を持続させたり仲間と遊んだりすることができるという。......ここまで読み、ふと、思い当たることはないだろうか。そう、京大生ってゴリラと似てるんじゃないか?ということである。
そもそも京大という大学は、トップのもとでまとまるよりも、各々好きなことをしてオリジナリティの集合体になる方が得意だ。山極教授も著書の中で「今の人間社会は、序列に基づく組織を作り、競争させたがる『サル型社会』に近づいている」と述べていたし、確かに今の社会は『サル型』に近いのかもしれない。だがそんな中、京大はその反対を行く。各々が自己主張を行い、序列をつけることよりも自分のしたいことを優先するのだ。
となると京大生は、「自分だけでなく、周りを思いやる」という特性を持ったゴリラから「思いやり」を学べば、自己主張しつつ周りも攻撃しない、という真の「自由の校風」を得ることができるのではないだろうか。 これからの京大のあり方は、ゴリラから学ぶべきなのかもしれない!
3.京大は一流の動物園になるべきだ!
山極「総長」がこれからどのように京大を形作るのかは未知数だが、京大はこれからも「自由の校風」を受け継ぎ、日本や世界のアカデミック界を牽引していく存在でありたいと誰もが思うところだろう。
そもそも京大に多い研究者という、個性も自己主張も強い人間たちを束ねていくのは、容易なことではないだろう。しかし、ゴリラ社会にも見られるように、競争ではなく共存していく形で各々が活躍する場所をつくるのは可能なはずである。
記者会見で山極総長は、京大の「猛獣」と呼ばれる先生方をまとめる「猛獣使い」になろうと思う、と語った。「京大は非常に個性豊かな先生が多い。それが京大が世界の最前線で活躍できる人材を育ててきた土壌であり、自由の発想、創造の精神を生んだのだと思うが、猛獣であるだけではいけないだろう。走る方向を猛獣使いによって定められないと予期せぬ方向へ飛び込んでしまう。その方向性とそこから得た成果をみんなで確認するということをやりたい。それが総長のリーダーシップだと思う」と述べたのだ。
ゴリラのように、自己主張しながら、周りと調和するような学生や教員が増えれば、京大はもっと強い大学になるのかもしれない。これからの山極総長、京都大学に期待を寄せたい。
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