かぐや姫の秘密


かぐや姫はなぜ子安貝を求めたのか 

世界中には古代から伝わる多くの物語(神話)があります。しかも周りの世界に対して動物や植物の生態や分類について集積された膨大な知識がその背後に潜んでいます。そして特有の論理がその物語の中に通底しているのです。


この記事では「かぐや姫」を扱い、物語中に出てくる「子安貝」の意味解釈を通じて今まで皆さんが思っていたかぐや姫とは違った世界を提供したいと思います。 


燕の巣にある子安貝

かぐや姫は多くの人に知られている日本の民話で「竹取物語」に収容されている。竹の中に隠れていた女の子を子供のいなかった老夫婦が育てることになりたちまちにして美しい娘に成長する。


しかしかぐや姫は明らかに「結婚したがらない娘」のタイプであり多くの求婚者を斥けていました。そして最終的に月に行ってしまうのです。  


この「竹取物語」の中の求婚者の一人に中納言石上麿足という人物の逸話が出てきます。そしてこの石上氏にかぐや姫は難題を出します。燕の巣の中にある子安貝というものを取ってきてくれたら結婚しましょうというのです。


子安貝は日本や中国の少数民族の間で安産の守り神として古くから珍重されてきました。確かにこの形は女性の性器に似ていて、しっかりとした形態を持っていてそれが安全な出産を招きよせるという思考を生んだのかもしれません。 


石上麿足は人を手配して燕の巣の中にある子安貝を取ってこいと命じました。ところが、みんな失敗してしまいます。それでは自分が行こうと言い、はしごを掛け、巣へ手を差し伸べる。すると手に触れるものがある。


よし、これこそが子安貝に違いないと喜んでつかんだ拍子にはしごから落ち下にあった鼎に激突してしまい下半身骨折になってしまいます。それでも子安貝さえ手に入ればかぐや姫と結婚できるのだと手の中を見てみると子安貝と思いきや燕の糞だったという話です。   


「鳥の巣をあさる(Bird Nester)」ということ 

燕が持った子安貝は国文学上の謎でした。しかし、燕が海から運んできて巣に置くという、出産に関わりを持つという他の石があります。子安貝の意味はこれらの石と比較することによってはじめて明らかになるのです。燕の巣の中にあるこうした会や石を総称して「燕石」と呼ぶことにします。  


南方熊楠は『燕石考』という論文でアメリカの詩人ロングフェローの有名な詩「エヴァンジェリンあるいはアカディの物語」から引用を行いました。その詩では詩人が少年時代を回想しています。


少年たちが燕の巣に何度も登り、燕が持ってくる雛の盲を治すと言われる石を見つけようとしているのです。燕は夏の短い期間に二度も産卵するため精力絶倫の動物だと言われていました。燕が雛の目を治すために海辺から運んでくる不思議な石があるというので熱心に探し回ったというのです。 


ここで「竹取物語」では燕が海から陸に持ってきた出産を軽くするために効くと言われていたのを思い出しましょう。この二つの伝承の中では燕が巣に置いている特殊な石が問題になっていますが、そこには共通な思考の構造が見られます。燕が陸から海に運んできた石、ないし貝が出産を助けたり眼の病気を治したりする力があると言われています。


つまり燕の運んできた石には、女性のお腹に入っているもの(子供)や雛鳥の眼に入って病気を起こしているものを外に連れ出す働きがあるということです。  


ここで重要なのが「鳥の巣あさり」という民間風俗です。ヨーロッパの民間伝承にもよく出てきますが、思春期を迎えた少年を年上の青年が鳥の巣に登らせて、卵などを取ってこさせるという習慣です。この時少年たちは先輩からはじめて性の手ほどきを受けると言われます。


鳥の巣に手を突っ込むという行動は暖かくとても気持ちがよくそして間違って卵をつぶしてしまったりする。この時卵でぐちゃぐちゃに濡れた手の感覚が大人になってから経験する様々な性の感覚とよく似ているのです。  


「Bird Nester」という言葉には他の意味もあります。これはフランスなどでは今でも使われているかもしれませんが、深窓の令嬢をものにするという意味です。これはなかなかものにできなかった女性(かぐや姫)をベッド(巣)の上で性の世界に連れ出すという意味にも解釈できます。 


かぐや姫は何が言いたかったのか

かぐや姫がなぜあの時燕の持つという子安貝を求めたのか。かぐや姫は燕が巣に隠しているというこの石ないし貝を手に入れれば、難攻不落と言われたこの私だって落とすことが可能ですよと言っているわけです。


「結婚したがらない娘」の代表でしたが、この娘を「外」に引っ張り出すには、ちょうど難産の母親のお腹から子供を難なく引き出すのに効果があると信じられていた子安貝や燕石を使えばいいのよと挑発的な冗談を言っているように考えられるのです。

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