昔の人達の過去への思ひ出

現在、懐古ブームといっても過言ではない程、多くのコンテンツが復刻版やリメイクなどで出回っている。では昔はどうだったのだろうか? 昔の人は何十年前の作品のリメイクを行ったり、その商品がブームになったりしたことはなかったのだろうか? 昔はそういった商品に対して「懐古」と似たような感情を持つことはなかったのだろうか? 


今回は、時代とともにどのような懐古ブームが起きたのかを見ていきたい。


鎌倉時代

貴族の時代が終わり、武士中心の時代が始まった鎌倉時代。この時、昔の平安時代を思い出してなのか、貴族や皇族などから「擬古物語」というジャンルが誕生しました。


「擬古物語」とは、「源氏物語」や「落窪物語」、「枕草子」といった平安時代の傑作を参考、題材にして鎌倉時代の人達が書いた物語の事を指します。大学受験などのための受験勉強などで触れた人もいるかもしれませんが、代表作として「住吉物語」や「苔の衣」などが挙げられます。


擬古物語は背景や登場人物は当然ながら、敬語や助動詞といった文法までもまさに平安時代その時に書かれたように描かれており、当時の人の平安時代への強い思い、憧れを感じさせます。  


物語の内容は時代を反映してか無常観が濃く、宮廷での失恋や隠世の話が多いです。自分たちの固有の文化を作り上げようとする武士たちにも平安の王朝、貴族文化を描いていた擬古物語は一定の人気があったそうです。鎌倉時代の貴族は平安時代の文化を「古き良き時代の文化」として懐かしみ物語を書いていたのですね。


「松浦宮物語」
おそらく藤原定家によって描かれた3巻構成の物語。主人公である橘冬明の子氏忠が失恋したり、唐に渡り活躍する。そして帰国後母との再開を果たすというもの。
「住吉物語」 
 作者未詳で2 巻構成の物語。継母によってイジメられる姫を描いた物語。「落窪物語」を模していると言われている。
「石清水物語」 
別称『正三位物語』。常陸守(ひたちのかみ) の子で東国の武士である伊予守が秋の君や木幡の姫君の事で恋悩むが、姫が宮中に入ったことで絶望し、最後には出家する物語。写真は舞台となる石清水八幡宮。
「苔の衣 (こけのころも)」 
 鎌倉時代の擬古物語。源氏の権大納言から3代にわたる人々の運命と恋が描かれている。4巻構成で作者未詳。「落窪物語」や「源氏物語」の影響が強いと言われている。



明治・大正時代

明治時代に入るとこのような歌が言われるようになります。


「天ちゃん返して 徳ちゃん呼んで もとの正月してみたい」


天ちゃんとは、天皇陛下の事であり、徳ちゃんとは徳川家の事です。西洋の文化や政治体制の変化により江戸時代の安泰の時代からガラッと変わり、そのような変化についていけず、一部の人は江戸時代の事を懐古していたのでしょう。


また戦前の俳人中村草田男は明治時代を懐かしみ、このような歌を詠みます。


「降る雪や明治は遠くなりにけり」


かつて自分が過ごした場所に訪れ「明治」という時代が、遥か遠い過去のことのように感じられたことから読んだそうだ。このように昔の人も数十年前を思い懐かしんでいたのです。


他にも江戸時代の商品・コンテンツの流行などが起こりました。代表例として2つ挙げます。


 1つ目は、日露戦争後の元禄模様ブームです。三越を中心に一種のマーケティングとして展開されたブームで、市松模様をモチーフにした商品などが多く販売されました。

こういった江戸ブームの精神は永井荷風のような作家に引き継がれていきます。東京オリンピックのオリンピックエンブレムに元禄模様がモチーフとなっていることを考えると、こういった再ブームのお陰で、今もこのように使用されているのかもしれないですね。


2つ目は、大正時代の郷土玩具ブームです。郷土玩具は日本各地で製作された玩具で、明治時代以降、産業の近代化にともない子供たちの遊び道具としては衰退していきました。

しかし土や木や紙などで作られ た地方色豊かな玩具が収集家の目に留まりブームとなり展覧会や組織がつくられました。


このように大人が子供のように玩具を買い集める行為から、世間の人は「大供」と呼ばれたそうです。これは昔の玩具に対して生じる、都市へ出ていった人達の地方への郷愁といった要因が大きいかもしれないですね。



戦後から現代まで

昭和 ( 特に戦後 ) において、消費文化はかなりの発達を遂げました。そういった消費文化の一環として戦前の懐古はブームとしていくつか存在しました。


例えば、白土三平、水木しげるなどの漫画家を輩出した紙芝居の再ブーム、司馬遼太郎などの作者や大河ドラマブームなどです。


そして、1980年代になるとレトロブームというのが起こります。このブームは1920年代から1950年代(大正末期から昭和の高度経済成長期直前)までの時代を懐古したムーブメントです。


この代表例として「はいからさんが通る」があります。「はいからさんが通る」は大正時代を舞台に竹刀を持った花村紅緒が主人公の1975年に連載した少女漫画で、80年代にはアニメの再放送やドラマ、映画化などが行われ一種のムーブメントとなりました。

このムーブメントは大正ロマンの着物が広まる一つのきっかけとなり、主人公と同じような格好 ( 着物に袴、そして足元はブーツ ) といった格好で卒業式に行く女子大生が現れたとも言われます。これは懐古というよりも、ハイカラという文化がむしろ古いものではなく、当時の人にとっては新たな奇抜なものに見えたのではなかったから起こったものでは無いでしょうか? 


1990年代半ばから2000年代前半にかけての昭和30年代ブーム (1955〜1964) が起こり、高度経済成長期に活躍した人に焦点を当てる『プロジェクト X』や昭和30年代の人を舞台にした『ALWAYS 三丁目の夕日』などの映画がヒットしました。


このように懐古という現象は常に、どの時代も起こっている現象なのかもしれないですね。

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