先日、「ゆるキャラグランプリ2012」が開催されたのは記憶に新しい。今年の覇者は愛媛県今治市のゆるキャラ「バリィさん」。今治市の名物が焼き鳥であることから生まれた、愛らしい鳥のキャラクターである。さて、昨今では「ゆるキャラ」という言葉が随分市民権を得たように思われる。なぜ地域をPRする存在である彼らに、これほどまで「ゆるさ」が求められるのだろうか?
最初に「ゆるキャラ」という言葉を生み出したのは漫画家・エッセイストのみらじゅん氏であるとされている。氏は、次のような「ゆるキャラ三か条」を提唱している。
・郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。
・立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること。
・愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせている事。
ここで、「ゆるキャラ三か条」の二つ目の項目に注目してほしい。なぜ立ち居振る舞いが不安定である必要があるのか、普通に考えればそれはデメリットになるはずである。
例えばディズニーランドのショーでミッキーの動きが覚束なかったら、見ている人は落胆するだろう。ではなぜゆるキャラには不安定さが求められるのだろうか?その答えは三か条の項目の一つ目にあると、私は考えた。
三か条の一つ目にあるようにゆるキャラとは郷土愛に溢れた存在であることが大前提であるが、それは同時に、ローカルな魅力に重きを置いているため必然的に全国的な知名度が低くなってしまうというデメリットも生んでいる。これは地域のPRなどの使命を背負うゆるキャラたちにとっては致命的な問題だ。
そこで重要になるのが、いかにファンを獲得できるか、である。地域に根ざしたゆるキャラは、まず地域の人々の人気を得る必要がある。このときに彼らの「ゆるさ」が大切なアピールポイントになるのだ。
自分の地元に次の二匹のキャラクターがいたら、あなたはどちらを応援したくなるだろう?一方は、それこそミッキーのように何でも出来てしまうスーパースターのようなキャラクター。
もう一方は、どこか頼りなくて、しかし憎めないかわいらしいキャラクター。前者は少し手の届かない印象があるが、後者はなんとなく近づきやすい雰囲気があるのではないだろうか。
プロのデザイナーによる完璧なキャラクターではなく、地方の一公務員によるちょっぴり不格好なキャラクター。その方が明らかに地元の人々も、同じ地域の出身者である「作り手」の息遣いを感じることができ、応援しようという気持ちになれる。ゆるキャラに必要とされる不安定さとは、そのようなはたらきを担っているのである。
これは、ゆるキャラだけでなくアイドルについても言えることだろう。もはや国民的アイドルになってしまったが、AKB48やSKE48だって初めは地域に根ざしたアイドルで、手の届かない高嶺の花でなく、あくまで「会いに行けるアイドル」であり続けることを目指した。そして全国的に有名になった現在でも、彼女たちは地元での活動を続けている。
ネット社会の発達によって世界中の不特定多数の人と繋がることが可能になり、地域への愛や地元の人々との絆が消えかけていると叫ばれてはや十数年がたったが、そんな今になって、このような形で地域の輪が再び形作られようとしている。「ゆるさ」や「不完全さ」がこの風潮のキーワードとなっているが、これらの言葉にはその語感からは想像もできないほどの可能性が詰まっているように感じる。
(筆者の個人的な意見としては、ゆるキャラ界にもアイドルのような「推し」という概念がもっと広まってほしい。ちなみに私の推しは東京都杉並区のゆるキャラ「なみすけ」である。なみすけかわいいよなみすけ。)
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